サプライズ!
 

No.5
2003/04/15 (Tue)

グレートローマンバス  ストーンヘンジからさらに北西へ進路を取り1時間ほど、自らの目的を達成したワイはその間ガイドの解説そっちのけでうたた寝に励んでいるとバスはあっという間にバースの街並みを眼下に見下ろす小高い丘の上に達していた。「建物すべてがハチミツ色で・・・」とガイドが仕切りに繰り返していただけあって美しい風景を見渡すことができた。森の中を人工の細い運河が通っていてそこに浮かぶ小舟がまた風流だった。ただ昼間から1人1艘立ち乗り状態でユラユラしてたけど仕事ないんかアイツら、と物思う。12時半頃現地到着。ローマンバスミュージアムという記念館(写真下左)をひと通りバラバラに歩いた後15時半まで各自自由行動とのこと。歴史的には、その昔とある病持ちの王子が家畜を追って沼に入り込んだところ岸に上がった時にはその病が治りその後風呂を造ったという伝説からこの地がBath=お風呂の語源となったようで、1世紀辺りには古代ローマ人の間でリゾート地として流行ったこともあったとか。 Bath Abbey顔パルトニー橋だから真ん中の写真のようなイタリアで見かける顔の遺跡もあったりするのかなぁと思ったり。ここでも音声ガイド機が配付されたのだがもう集中力切れで一切聞くことができなかったので詳細はわからない。大浴場の水は神田川とさほど変わらないほど澱んでいた。まあ現在は使われていないのだから当然と言えば当然なのだが。

 記念館を抜けると自由時間。お昼時ということでクールなレストランを2,3軒紹介されてもいたのだがパン屋でハム&チーズのバゲットを買いひとまず食べながら川沿いを通り街を出歩くことに。市場の惣菜屋で、イギリスではメジャーな食べ物らしいコーニッシュパスティ(コロッケの具らしき物をパンに詰めた食べ物)が売っていたので買ってみたが、先客が頼んだ別の商品はレンジでチンしていたのにワイのは冷蔵庫から出してそのまま紙に入れて手渡された。イヤな予感はプンプンしていたがせっかくだからと冷たいまま口に含んでみたがとても完食できる代物ではなくひと口で捨ててしまった。「温めてください」って何て言うんだべ・・・。 ロイヤルクレッセントその後ザ・サーカスという円型の住居を経由して街の外れにあるロイヤルクレッセントを目指しひたすら坂道を上っていく。クレッセントとは三日月のことで文字通りこの写真の建物は美しい半円のカーブを描いて建てられていた。実際人が住んでいるようだが一部はホテルにもなっていて泊まることもできるらしい。ただ一泊350ポンド(70000円)だそうな。このロイヤルクレッセントの前は大きな広場になっていて地元っ子か観光客かはわからないが外人がフットボールやらバレーボールやらをして楽しんでいた。1枚写真を撮って満足したワイはガイドにもらった街の資料には載っていない、ここから南の坂下の方の一本道を下ってみることにした。

 ちょっとして広い下り坂に出ると山道の中にただ1軒カフェらしきものがあるのを発見。時間に余裕もありちょうど先ほど腹ごしらえに失敗したところなので、いよいよロイヤルティータイムを満喫かとばかりに入ってみることに。店の中はオープンテラスのようになっていて外には遠くバースの街並みを臨むことができた。やはり穴場のようで客は広い店内に1/3程度しかいない。後ろに並ばれることもなくリラックスしてアールグレイを注文するとレジの黒人のおっさんから「ありがとうございま〜す」と突然流暢な日本語が。ワイが目をまん丸くして顔を上げると「お〜日本人ね」と顔を横に向ける黒人。それにつられてワイも目を横に流すとそこには紛れもなく黒髪の日本人と思しき女の姿が。なんと、こんな秘境で日本人に出遭うとはワイもビックリだったが向こうも驚いたらしく「バースに住んでるんですか?」やら以下質問攻めに。黒人も交えて旅の経緯を話ししばし談笑。黒人は、ホントかどうかは知らんが兄貴が六本木で働いてて自分も半年日本に住んでたことがあるだとか。カタコトながらも日本語で会話するのを苦にしない様子。「なんかお勧めのデザートあんの?」と聞くと怪しい笑みを浮かべながら「コレね」とディスプレイに並ぶチョコブラウニーを指差したのでそれもついでに注文。こっちが英語、向こうが日本語での会話のやりとりが実に怪しかったがサンキューと奥まった席に落ち着く。幾分興奮しながらも待ち焦がれたティータイムに突入。アールグレイはやはりアールグレイだったか、1杯目はストレートで、残りはミルクを注いで愉しむ。チョコブラウニーはマジで甘い。食べる毎に歯が痛くなる思いがした。途中、別テーブルにオーダーを運ぶ黒人がこっちを振り返り「いくつね〜?」と聞いてきたので応戦。「オ〜、ボクは26ね」との応えにオマエホントか!とツッコミたくもなったが笑顔で相対するオトナのワイ。 とあるカフェにてしかし間もなくして自分自身の衝動が抑えきれなくなりデジカメを手にレジの前へ。「2人の写真撮らしてください」とお願いすると快く応じてくれた。真ん中の彼女はドイツ人でもう少ししたら国に帰ってしまうらしくワイがこの写真を撮った後、自分のカメラを持ってきて仕事仲間との写真を撮ってくれと頼まれたりもした。「ピースは日本での定番のポーズなのよ」とドイツ人に説明している日本人の会話力が羨ましかったなぁ。彼女は元々3ヶ月だけロンドンに来ていて一旦日本へ戻りまた6ヶ月こっちに滞在して再度日本に戻ったがやはりこっちの生活が忘れられないらしく再び渡英してきて今に至るとのことだった。こうして席に戻ったのだが徐々に惜別の念に駆られてきたためトレーを下げに行くついでに「やっぱり、彼と一緒に撮ってもらってもいいっスか?」と懇願。そしてありがたくOKをもらい撮った写真がコレ。 とあるカフェにて2暗くてよく見えないが他人に対してあり得ない笑顔をしているワイ。しかも厨房内に入れてもらい黒人の前掛けも掛けさせられているという前代未聞の作品に。日本では話し掛けること自体が奇跡なのだから異国での開放感がどれほどだったかを窺い知ることができるのではないか。ちなみに店の隅っこにいた左の幼い子も一応このカフェのスタッフらしい。

 名残惜しくもあったが集合時間が迫ってきたこともあって麓に戻ることに。帰りのバスはしばしガイドとのマンツーマントークで幕が開けた。カフェでの1件を話すと「そんな厨房の中まで入れてもらった人、今まで聞いたことないですよ」だって。お店もやはりメジャーではないらしく知られてはいないようだった。往きは建物の解説やらでいろいろ忙しなかったガイドも、帰りはヒマヒマで興奮冷め遣らぬワイの都合のいい話相手と化した。イギリス話をあれこれ交わし、明日夜フットボールを見て明後日競馬場に行くつもりだという己の予定を伝える。「競馬場ってアスコットですか?」との返答にニューマーケットの大まかな所在地と調べたロンドンからの行き方を告げると「国鉄ですか、スゴイですね。勇気ありますね。こっちに住んで3年ですけど私でも国鉄は乗らないですよ。」との予想外の発言にビックリするワイ。問いただすとイギリスは鉄道がめちゃくちゃで乗っている列車が途中で行き先を変更したりもするらしく、さらにこの前もユーロスターがパリからウォータールー駅に向かうところをうっかり間違って別の駅に着いてしまったとのタイムリーなネタもあるらしかった。他ならぬ地元民の言葉に途端に動揺が広がるワイだったがこの上ない絶好の機会にもはや回避という選択肢はなかったし、ニューマーケット遠征への意気込みが揺らぐこともなかった。不安は不安だったが・・・。バスは帰りも順調に進みウェールズとの国境?沿いから高速に乗り東にグングン進んでいった。ロンドンまで残り30分というところで右手遠方に英国王室の居城・ウィンザー城の姿もわずかばかりだが目にすることができた。帰りは6箇所ほどあるバス停の好きなところで降りてよいらしくまだ18時過ぎであったことから高級ショッピング街・ナイツブリッジで降りてデパートを覗いて行くことにした。何よりこの日は往復6時間のバス輸送が主だったため脚がまだ取れてなかったのが積極性の源だったのだろう。

 ナイツブリッジでの降車場所からすぐのところに日本でも有名らしい超高級デパート・ハロッズがあった。 ハロッズ前日旅友の彼らと話している時は「ハロッズってジーンズ No!って言われるらしいで」との噂も出たのだがそんなことはなく入店はできた。しかしこいつは確かにスゴイ。日本で言うと銀座辺りに当てはまるのか、しかしここまで露骨にリッチな建物はないような気もする。写真撮影もNG。買う物などないわいというのを知りつつも館内を下から徐々に上がっていく。立ち寄ったトイレが一面金色なのにはもうただただ口を開けるしかなかった。大便のドアがワイの泊まったホテルのドアより大きいなんて。これはもう撮るしかない、と思い立ったがタイミング悪く便所掃除人が入ってきて敢え無く断念。これだけスゴイと使用人までリッチに見えてくる・・・なんてことはなかった。これは日本と同じでよかった。3階にて赤絨毯が敷き詰められた本屋に立ち寄る。ここならあるだろと隈なく捜索すると乗馬雑誌が陳列されたコーナーの一番端から『Pace Maker』という冊子を発見。中を見て、これぞイギリスにおける『優駿』であることを確認し迷わず購買。ちょうどニューマーケットの競馬場特集も組まれていてまさに至極の一冊となった。ガイドにあんなことを言われてしまったがために万が一遭難した時に備えてとニューマーケットの地図をも探したが残念ながらそれについては好ましいものがなかった。満足気にエスカレータを上ると最上階6階はスポーツフロアだった。言うまでもないがイギリスは乗馬大国である。ごく普通に一区画乗馬コーナーが設けられていたがもうそこには宝の山がいっぱい。実際に使用する鞍が、アブミが、ブーツが、そして小物に至るまでがふんだんに取り揃えられていた。ネタ的にはここで暴露することになってしまうのが非常に残念なのだがニヤニヤと堪えられぬ笑みを浮かべたワイはここで20分ほど迷った挙句、ムチとハミを購入した。日本のショップでは(羞恥心で?)どうにも買えなかったムチだったがここ本場ではその殻を打ち破るべく何かが確実に存在したのだ。ムチもハミもそれこそ何10種類もあったのだがムチは実用的なシンプルなものを、ハミは普通サイズのサラブレッド用の物を選択した。そしてその他に床のカゴの中にテンコ盛りにされていた、飼い葉に混ぜて食べさせるらしき『Horse Bix』という食べ物を購入(ちなみに1ポンド(200円)でペパーミント風味って書いてあるから誰か食べてみてください)。さらに乗馬用シャツも、と店員に試着かと思わせるところまで手を伸ばしたのだがこれも値段が高く、サイズがMなのに腕が明らかに太い作りだったのを確認して中止。果たしてこれが懸命な判断だったのかどうか。他にもまだネタはあるのだがそれはまた別のお話ということで。その後閉店間際の店内を血も滾らんばかりの勢いで地階まで突き進みパイプ屋にて日本で頼まれていたラッキーストライクを購入。イギリスは煙草が異常なまでに高く1箱4.49ポンド(900円)もする。嫌煙家のワイにとっては日本もぜひ見習って欲しいのうと思ったりもするんだが。こうして高級デパートでの買い物劇は終了。ハロッズのロゴ入り袋からムチの先端が15cmほど飛び出しているのが気になるがここは英国、こんなの日常茶飯事さと自らを言い包め地下鉄に乗り込む。

 19時半過ぎ、前日と同じく直接S氏の部屋を叩くワイ。しかし昨日とは足取りがまるで違いもう軽くて軽くて仕方がない。痛みこそあれ、偶然の出会いと癒し系アイテムの入手で完全に有頂天になっていた。対するS氏の方は充実度こそ負けないもののこの日はずっと歩き回っていたようで幾分グッタリしている様子。ただビートルズ縁の地・アビーロードを自らの足で見つけ歩いたことでその佇まいは相当満足気に見えた。この日の夜は元々ワイはハマースミスから南、それほど距離的に遠くない場所にあるチェルシーのホームスタジアム・スタンフォードブリッジと稲本フルアムのホームスタジアム・クレイヴンコテージ(ただし来期まで改装中で現在は不使用)に行けるようなら行ってみるべしという予定を練っていたのだがそれを彼に話したところ乗ってきたのでしばし息の入りを整えた後向かってみることになった。地下鉄で乗り換えを挿みFulham Broadway駅下車でも行けるのだがせっかくだからとこの旅初の乗合バスを利用してみることを選択した。また、このイギリスのバスというのが曲者でバス停に到着しても一切アナウンスなしでどこがどのバス停か、それも夜だとさらにわからんという代物なのであった。ただ目的地Fulham Broadwayは路線図を見ると終点であったためどこかに安堵感があったのかうっかり部屋に荷物を置き地図も持たずに出掛けてしまった。しかし初体験の2人が、バスには途中止まりの便もあるのだということを知るまでにそれほど多くの時間を必要とはしなかった。20分ほど待ってようやく来た391便はひた向きに郊外の夜街を走っていった。中で座っていると斜め後方の黒人に話し掛けられた。「Can I speak English?」何か違くないかと思いつつも適当に応対。バスが停車して動かなくなると「終点だぜ〜ベイベー」と無知な我らに教えて彼は去って行った。外人みんないい人〜♪しかし降りてみてビックリ、バス停の表記がFulham Broadwayではないことに気付く。到着地名は思い出せないがどうやらそういうことらしい。地図もなく見知らぬ土地で右往左往する2人。とりあえずテムズ河沿いにスタジアムがあるという自らの拙い記憶を辿り西方面に歩くことを決めた。歩くこと30分以上、街灯が少なく薄暗くなり始め見た感じかなり下町チックで独りで歩くことはまずないであろう怪しい住宅地を抜ける。「きっと外国で邦人誘拐事件とか起きるのはこういう場所なんだぜ」なんて呑気な話はしていたが後ろから車が来る度にいきなり止まって連れ込まれるのではないかとドキドキしていた。こっちの人はカーテンを閉めるという習慣に疎いせいなのか、部屋の中が丸見えのお宅もちらほらと。しばらくして遠くにスタジアムの鉄塔らしき黒いものを目にして2人きりの東洋人に光明が舞い降りる。そこはフルアムのホーム・クレイヴンコテージだった。 クレイヴンコテージ「あらっ?」と首を傾げるワイ。テムズ河沿いがチェルシーだと思い向かっていたのだがどうやら逆に把握していたらしい。まあどうせどっちも選手いないしこの際どうでもいいか、とここまで無事到着した感激に思わず酔い痴れる。フェンス越しにわずかながらもピッチが見えそうだったのでギリギリまで寄り掛かり激写。暗いが一応写真右側にフルアムのロゴマークが見えるのだが。「これ、乗り越えたら中入れんのかなぁ」などと言っているとここで彼のデジカメの充電池が燃え尽きたようで微かに凹んでいる。「仕方ない。肉眼に刻み込むよ。」とこのプラス思考はとても見習いたいところだった。そのまま道ナリに歩くとスタジアム内部の廊下が見える四角い10cmほどの穴が開いていたので当然覗く。逆サイドまで来てまた写真を撮ろうとしたところ右上にある5mほど離れた小屋から物影が動いたのに驚く。その獣は豪快に窓を開け放つとすぐさま叫び始めた。よく見ると人間だ。ガタイのいい黒人の警備員だった。たぶん「オマエら、何やっとんじゃー!」って言いたかったんだろうがこちらには伝わらない。ただ関西弁以上の威圧感と今にも小屋を飛び出して獲って食わんばかりのド迫力さに肝を冷やし「ソーリー」を連発して逃走した。その後すぐ脇から今度は反対側のサイドにも廻りこめそうだったのだが「カメラ没収されたらシャレにならんでしょ」と彼に諌められ撤退することに。いやぁ、外人はキレるとコワイ。意味ないけどあの獣をヘスキー2と名付けよう。 フィッシュアンドチップスその後まだまだ怪しい道を歩きながら帰途に着く途中のトルコ系ショップでフィッシュアンドチップスを初体験。とても外では食いきれんとこのままの状態でツマミながらホテルに持ち帰るとエレベータを降りてきた、つい先ほどイギリスに着いたばかりかと思われる3人のアメリカ人系ギャルがこれを見て「Oh!Fish&Chips♪」とハシャぐので「食う?」と勧めると見事に食った。食った?食うか、普通見ず知らずの人間の差し出した物を。やっぱり外人はワカラナイ。20時前に部屋を出たものの帰った頃には時計は23時半を回っていた。ビビったけど充実した近場巡りだったと思う。ちなみにこのムチ、60cmのトランクにも収まらないのだがどうやって故郷へ持ち帰ろう・・・危険物か、これは。明日はいよいよフットボールっス。

本日ゲットしたアイテム