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from MIDWAY Farm

 
 
 
 
 
君のいない春 〜 ミッドウェイファーム募集馬見学ツアーリポート2005 〜
 
GOC広報担当⇒バイ男
2005/04/16 (Sat)
ウインヴィーナス

 昨年に続いて今年も上記ツアーの末席に加えさせてもらった。現2歳世代ですでに出資しているウインカスケード(父サクラバクシンオー×母イットーティアラ)は不在も、現役時代にともに辛酸を舐め合ったブラックホークの娘・ウインヴィーナス(母レガシーヴィーナス)をこの目でしかと確かめるためであった。

 今後再びあるかどうかわからないブラックホーク産駒の所有機会。「出資は1年1頭」という一口馬主立ち上げ時に掲げた訓示を打ち破り、昨年10月から毎月1万円ずつこつこつと貯めていたヴィーナス積立金を進上する価値が本当にあるのかどうか、その狭間で彷徨える毎日に決着をつけるために。さて、賽は投げられた・・・のか!?

←これはラクダ・・・かな?



 もったいぶって結論を先延ばしにする必要もないほど、私のシナリオはいとも容易く崩壊への縮図を辿ることになる。参加者を乗せたバスが東京駅丸の内口を出て15分、首都高湾岸線を進んでいるときだった。

 恒例のウインRC社員の方による挨拶が始まってしばらく。

社員「ここでですね、皆様に事前にお伝えしておかねばならぬことがあるのですが・・・」

 来た!昨年この同じ語り口で、当時唯一の出資馬だったウインアンセムの風邪による調教中止の報を耳にしている。隣の友人に向かって「ヤバい。来たぞ来たぞ」と鼓動が俄かに警鐘を鳴らし始めた。続けられた言葉はこうだった。

社員「レディアレグレットの仔、う〜んとつまりウインプレストですが、数日前に打った笹針の影響で本日は追い切りは行わないとの報告を受けています」

 よかった。ほっと胸を撫で下ろした。車中にいるプレストのオーナーや出資検討者には申し訳なかったが、2年連続での一頓挫など不幸以外の何物でもない。運命の悪戯の矛先がヴィーナスに向けられなかったことで、先ほどの張り詰めた一瞬の緊張が解け、ほんのり安堵の表情を浮かべた私だった。しかし・・・

社員「あと・・・」

「なにぃぃ!まだいるのか!!」聞いてない。予期していない。そして淡々とした口調でこう続けられたのだった。

社員「なお、ウインヴィーナスについては本日は疲れが溜まっているため追い切りを行わないかもしれません」

 ガビーン。こんなことがあっていいのか。私が何か悪いことをしたのだろうか。まさかの衝撃が一小市民を襲った。あまのじゃくに導かれし白羽の矢はヴィーナスにも立てられたのだった。



 以降、それまでのみなぎる覇気はどこへやら、友人に投げ掛ける言葉にポジティヴなフレーズは微塵もなかった。それもそのはず、現地に着いてから先ほどの伝達事項に対して訂正の報告が入ったからだ。

「え〜と、ウインプレストの調教は実施されるようです。というわけで、本日の追い切りは計5頭で、ということになります。」

プー プー プー ・・・ ガチャン

 


君のいない春 〜 調教風景 〜
 

 ツアーの行程は昨年と同じく、2歳馬の調教見学から在厩現役馬のお披露目、そして2歳馬のお披露目へと流れていく。ではまずは調教風景から嗜もう。

 調教はウイン勢の5頭だけでなく、他の滞在馬(おそらくこちらも2歳馬)も合わせて計20頭ほどで行われた。が、いきなり予期せぬアクシデントが起きた。馬装整備を終え馬房の反対側からゾロゾロと出てくる未来のスターホース候補生たち。ここでその中の1頭が、日頃は見ることのない我々見学者の集団に驚いたのかパニックになってしまい、乗り役を振り落として放馬してしまったのだ。幸い、従業員の方々の適切な対処でコースに出る前に取り押さえられ事なきを得たのだが、若駒育成の難しさを早くも垣間見るワンシーンとなった。


空馬と落馬に驚くウインフェイム


ウインソリストとウインアズライト
ウインソリスト ウインアズライト


 調教内容は最近の調教メールにもあるような、1周850mのダートコースをまずダグで1周、そしてほぐれてきたところでキャンターを2周のメニューである。ペースは18−18とのこと。その他大勢が先を進み、やや離れたところからこの日の"主役"であるウインの5頭が列なるフォーメーション。純白の輝きを放ち馬場に映えるダービーゼッケン(金刺繍はなし)が一際眩しい。

 コースに出ている全馬を比較対象にすると尻っぱねを繰り返す馬なども見受けられたのだが、ウイン勢に見解を絞ると一番若々しかったのはウインフェイムあたり。馬群の最後方でチョコマカと蛇行を繰り返ししばし乗り役をてこずらせているように見えた。この馬、早期デビューという触れ込みのようだが大丈夫なのか、と若干不安に思えたものだ。逆に言うとあと2ヶ月でしっかり競走ができるようになるほど、この時期の2歳馬の成長過程は目覚ましいものがあるのだろう。この馬についてはウインサイドがひたすら猛プッシュを続けていたことを付け加えておく。


ウイン勢5頭揃い踏みの図とウインブラッド
ウイン勢5頭揃い踏みの図 ウインブラッド


 息の入りが整うと、いよいよメインディッシュとも言うべき坂路調教に移る。例によって多勢を先陣に2頭がペアを組んで1000mに延長されたコースを一心不乱に駆け上がっていく。と表現すると、レース当週の追い切り風景をオーバーラップさせてしまうところだが時節はまだ2歳春。フォームはてんでバラバラ、シャープな併せ馬とは程遠い内容で幼稚園児のお遊戯会を彷彿とさせるものだった。見学者は一堂が皆、我が子を見守るような熱い視線を注いでいる。騎乗者が並走馬との間隔や周りの状況に細心の注意を払って乗っている様子が覗えた。


ウインアズライト(外)とウインフェイム
ウインアズライト(外)とウインフェイム ウインアズライト(外)とウインフェイム

ウインブラッド(外)とウインソリスト
ウインブラッド(外)とウインソリスト ウインブラッド(外)とウインソリスト

ウインプレスト単走追い
ウインプレスト単走追い ウインプレスト単走追い


 パドックの撮影でもそうなのだが、ファインダー越しに姿を追っているとフレームワークに夢中になるため走りの内容まで注視できていないことが自分でもよくわかる。カメラ・レンズの質向上に伴い、画像は満更でもなく写っているように見えても肝心の腕の上達がお留守になっていることは否めない。連写のコマを振り返り、各馬ともフットワークが安定していないことだけは見てとれたのだが。この辺りの詳細はじっくりと観察していたであろう、友人の項に任せたい。ただ、巨漢ゆえまだ仕上がり途上も、ウインブラッドの豪快な駆けっぷりだけは脳裏に刻みこまれた。ふと隣から漏れた声が心を撃つ。「やっぱこっちにしておけばよかったのに・・・」

 ちょうどこの坂路調教の瞬間にカメラにトラブルが発生してしまったのだが、幸い撮影は続行できたのでそれはまた別の機会に取り上げることとする。その頃、悲劇のヒロインはただ1騎、小屋に残されていた。

 


君のいない春 〜 お披露目 〜
 

 調教が終わり2歳馬がクールダウンを済ませてお色直しをしている合間に、まずは現役馬のお披露目が行われた。見学者一同が厩舎の前に人波を作り主役たちの登場を今か今かと待ち構えている。


ウインジェネシス(左)とウインレックス


ウインリゲル(左)とウインラシェーナ


ウインペルラ(左)とウインギャラクシー


 歴戦の猛者だけにどの馬ものんびりと落ち着いた素振りで、半ば見られるのに慣れているといった様相。個人的にはラシェーナの均整のとれた馬体が好みかもしれない。春の新潟からいきなり狙える出来、と場長が口を酸っぱく言っていたのははてどの馬だったか?あ、帰り道でリゲルが暴れてる・・・

 続いて、場所を厩舎の反対側扉のある洗い場の方に移していよいよ2歳馬との対面を迎える。現役馬と違い、単独での行動は馬が不安を抱き落ち着いていられないので2頭同時でのお披露目となった。


ウインブラッド(左)とウインアズライト


ウインプレスト(左)とウインソリスト


ウインヴィーナス(左)とウインフェイム


 ウ〜ン、ナイスなコメントが思い浮かばないのはやはり被写体としてしか対象を捉えていなかったせいなのか(言い訳)。哀しいところ。これも相方のトークに期待してしまおう。いったい私は何しに行ったんだか・・・いやいや、ヴィーナスの動きを確かめに行ったんだってば、と自戒。

 そのヴィーナス、父譲りの鼻面と腹太鼓は募集のパンフと何ら変わるものはなかった。目の前にいる限りでは疲労困憊のようには見えないが。そして馬体も430kgとは思えぬボリュームが駆けるためにはちょうどいいサイズのように見える。募集当初の頃の写真から感じた、あの華奢でロバのようだった体が見違えるようだ。今日走ってみてさえくれれば・・・

 


君のいない春 〜 突撃インタビュー 〜
 
ウインヴィーナス

 この見学ツアーは上述した調教見学とお披露目以外に、時間調整の意味も含めて随所に社長やミッドウェイファームの敏腕・宮崎場長への質問タイムが設けられている。育成のやり方や競走馬の精神面など貴重な話も出ていたが、2歳馬の品評のために足を運んでいる見学者にとっては当然それらの動向が最も気になるところとなる。

 ミッドウェイに着いて調教が始まるまでとお披露目に移るまでの間、そして帰りのバスの中と、相次いで「ブラッドの調教具合は?」「フェイムは早めに下ろせるんですか?」などの質問が威勢良く飛び交っていた。

 しかし、誰一人としてヴィーナスのことを口にする者はいなかった。他の5頭の名前は少なくとも一度は議題として挙げられていたというのに。そういえば「ヴィーナスの調教休み」というビッグニュースが車中を駆け巡ったときも面だったリアクションを取っていたのは私だけだったような・・・

 「それなら自分で聞いてみればよいのでは?」とお思いになられるところだろうがあいにく私、そのような開放的な心は幼少の頃より持ち合わせていない。このままではせっかくの機会をみすみす逃してしまうとウジウジ。

 このツアーの最終工程には例年、ヒルトンホテル成田でのバイキングという分不相応なイベントが組まれているのだが、場長は昨年同様ミッドウェイに居残りになるものと思いきや、なんと今回は特別にホテルまで来て会食を共にされるとのことだった。

 これは天の助けとばかりに会食も終了を迎え、一行がホテルの入り口に向かっているところで足を止めてもらい、個別に場長にヴィーナスについて伺った話が以下である。


 事前に配布されていた、2歳馬6頭が載っているパンフのヴィーナスのところを指差し尋ねる私。馬の名前を確認ししばしの沈黙を置いて場長が口を開いた。

リポーター「ヴィーナスはどうですか?」

場長「この馬はねぇ、バネがいい!」

思ってもみなかった賛辞のひと言にうっとりくる私。しかし直後にこう続けられた。

場長「ただ、足元がそんなに強くない。だから使い詰めにされるとどうしても苦しくなる。数使わなければ大丈夫。」

リポーター「ゑっ!? それは今後も騙し騙しやっていかないとダメってことですか?」

場長「それは我々ではなくて、厩舎の方針によるところだからなぁ」

ごもっともな話である。そこで話を現在に切り替えた。

リポーター「今日お休みしていたわけですけどそれまでの動きはどうだったんでしょう?乗り込み開始が遅れたという話もあるんですが。」

場長「いやぁ、そんなことはない。いい動きをしていたよ」

リポーター「体重が430kgと軽いのは?」

場長「なぁに、あのくらいがちょうどいいんだ」

リポーター「では走りには影響ないんですね?」

場長「大丈夫。この馬は順調に行ければ問題なしだよ」


 忙しない中での突然の飛び込みに嫌な顔せず応対していただいた場長にこの場を借りて再度お礼を言いたい。その節はありがとうございました。

 しかしそれとこれとは話が別。足元に不安があるとはこれは思ってもみないニュースだった。調教メールでは「球節に腫れがあったがもう大丈夫」などと書かれていることもあったが、それ以外にも何かと不安を抱えながらのそれこそ慎重な調整が続けられてきていることが想像に値する。

 普段なら元来が負け組気質な私は、調教をこの目で確認できなかった事実すら忘れ初志を貫き、対面まで果たしたヴィーナスの出資へと傾いてしまうところだろう。しかし今回はまだ満口まで間があり入厩メドもすぐそこという状況ではないだけにこのまま様子を見続けてみようかと今は思っている。

 焦ることはない。時間はまだたっぷりと残されているのだから。私にも、そしてヴィーナスにも。

 

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