ツアーの行程は昨年と同じく、2歳馬の調教見学から在厩現役馬のお披露目、そして2歳馬のお披露目へと流れていく。ではまずは調教風景から嗜もう。
調教はウイン勢の5頭だけでなく、他の滞在馬(おそらくこちらも2歳馬)も合わせて計20頭ほどで行われた。が、いきなり予期せぬアクシデントが起きた。馬装整備を終え馬房の反対側からゾロゾロと出てくる未来のスターホース候補生たち。ここでその中の1頭が、日頃は見ることのない我々見学者の集団に驚いたのかパニックになってしまい、乗り役を振り落として放馬してしまったのだ。幸い、従業員の方々の適切な対処でコースに出る前に取り押さえられ事なきを得たのだが、若駒育成の難しさを早くも垣間見るワンシーンとなった。
空馬と落馬に驚くウインフェイム
ウインソリストとウインアズライト
調教内容は最近の調教メールにもあるような、1周850mのダートコースをまずダグで1周、そしてほぐれてきたところでキャンターを2周のメニューである。ペースは18−18とのこと。その他大勢が先を進み、やや離れたところからこの日の"主役"であるウインの5頭が列なるフォーメーション。純白の輝きを放ち馬場に映えるダービーゼッケン(金刺繍はなし)が一際眩しい。
コースに出ている全馬を比較対象にすると尻っぱねを繰り返す馬なども見受けられたのだが、ウイン勢に見解を絞ると一番若々しかったのはウインフェイムあたり。馬群の最後方でチョコマカと蛇行を繰り返ししばし乗り役をてこずらせているように見えた。この馬、早期デビューという触れ込みのようだが大丈夫なのか、と若干不安に思えたものだ。逆に言うとあと2ヶ月でしっかり競走ができるようになるほど、この時期の2歳馬の成長過程は目覚ましいものがあるのだろう。この馬についてはウインサイドがひたすら猛プッシュを続けていたことを付け加えておく。
ウイン勢5頭揃い踏みの図とウインブラッド
息の入りが整うと、いよいよメインディッシュとも言うべき坂路調教に移る。例によって多勢を先陣に2頭がペアを組んで1000mに延長されたコースを一心不乱に駆け上がっていく。と表現すると、レース当週の追い切り風景をオーバーラップさせてしまうところだが時節はまだ2歳春。フォームはてんでバラバラ、シャープな併せ馬とは程遠い内容で幼稚園児のお遊戯会を彷彿とさせるものだった。見学者は一堂が皆、我が子を見守るような熱い視線を注いでいる。騎乗者が並走馬との間隔や周りの状況に細心の注意を払って乗っている様子が覗えた。
ウインアズライト(外)とウインフェイム
ウインブラッド(外)とウインソリスト
ウインプレスト単走追い
パドックの撮影でもそうなのだが、ファインダー越しに姿を追っているとフレームワークに夢中になるため走りの内容まで注視できていないことが自分でもよくわかる。カメラ・レンズの質向上に伴い、画像は満更でもなく写っているように見えても肝心の腕の上達がお留守になっていることは否めない。連写のコマを振り返り、各馬ともフットワークが安定していないことだけは見てとれたのだが。この辺りの詳細はじっくりと観察していたであろう、友人の項に任せたい。ただ、巨漢ゆえまだ仕上がり途上も、ウインブラッドの豪快な駆けっぷりだけは脳裏に刻みこまれた。ふと隣から漏れた声が心を撃つ。「やっぱこっちにしておけばよかったのに・・・」
ちょうどこの坂路調教の瞬間にカメラにトラブルが発生してしまったのだが、幸い撮影は続行できたのでそれはまた別の機会に取り上げることとする。その頃、悲劇のヒロインはただ1騎、小屋に残されていた。
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