新潟サバイバルデイ      


 
 ザ・ニンジャ 灼熱地獄
 

トーセンダンディ 快勝

 日本初の直線重賞・アイビスサマーダッシュの記念すべき第1回開催には過去最多、総勢7名(+α)もの有志が集結した。例によって早朝、JR新潟駅近くに抛り出されたグ民ご一行様は4〜5kmほど離れた日本海を徒歩で見に行くことに。遠く佐渡をも一望できる、ひと気のない岸壁沿いの古きよき時代のデートスポットは北からの招かれざる客にとってみればその使命を果たす格好の舞台となり得ることが今となっては容易に想像できてしまう。まだ6時台だったにも関わらずすでにこんがり照り焼きになりそうなほどの強烈な陽射しが日の出とともに容赦なく放たれていた。雲ひとつないこの灼熱地獄もまたある意味、悪天候といって然るべきものがあったろう。

 新潟競馬場は市街から遠い。鈍行に乗りさらに最寄駅・豊栄からタクシーで20分ほどの時を費やしようやく到着。まだ8時半だというのにものすごい人の数である。幸運にもなぜだかぽっかり空いていたゴール板前の好スペースを確保すると七者七様それぞれが思い思いの時間を過ごすことに。シャツを脱ぎ捨て弛んだ上半身を焼きに入るバイ男。しかしまだ1Rのパドックが始まるか否かという9時半の段階にして、前週湘南の熱波で黒く汚いほどに焼けた肌がジリジリ悲鳴を上げ始めた。時間が経つに連れ徐々に両腕と背中全体から水ぶくれと思しき固まりが生成され、そしれ見る見るうちに増殖していった。

 そんな最中に事件は起こった。この日のオープニングレースを告げるファンファーレが鳴ってまもなく、グ民一行の目の前をこの日真っ先に駆け抜けたのはなんと果糖氏の愛馬・メイセイプリマだった。もはや新聞を見る目すら虚ろになりかけていた男の横で高々と勝ち鬨を上げるオーナー。たまたま訪れた遠征の地でたまたま出走していた愛馬が人気薄で激走、しかも馬自身最初にして生涯最後の勝利を飾るとともにオーナーにこの日全敗を免れる唯一の当たり馬券をプレゼントすることとなった。まさに神憑り的な演出であった。

 この後、メインまでの思い出がほとんどない。ただひたすらトイレでの行水と馬場との往復を繰り返し恩人(馬)となるクロフネタオルにて付け焼き刃ながらも背中の熱を冷ますことに徹していたと思われる。当然馬券など当たるわけもなく、もうなんでもいいやとカープファン予想に便乗した1レースだけが不本意ながらも的中してメインを迎える。

 が、丸半日苦しみ抜いた不幸者に対して天も時に粋な計らいを以って応える。ターフビジョン越しに映ったその頼れるパートナーの名はファイトコマンダー。遠く北の大地・札幌記念でダービー馬との熾烈な2着争いを僅かに制し精神的安定とそれ相応の治療費用をもたらすこととなった。しかし正反対に現地のメイン、第1回のこれを見るためにわざわざ新潟まで来たんじゃないのか、と責められて止まないアイビスサマーダッシュはわずか5m手前を次々と通過していく影に対してカメラを構えることすらなく無抵抗にスルーしていった。完敗だった。

 こうして結果的にはこの日の稼動率からすると圧倒的なプラス収支で全レースを終えた。しかしこの新潟遠征において一番色濃いインパクトを残したのはこれ以後の出来事だった。

〜 つづく 〜